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山崎隆のシェアハウスで幸せになる方法

失敗例に学ぶ⑤
[相続税対策が目的の土地有効活用でシェアハウスを建てる]

いわゆる地主層が、土地有効活用や節税対策などを目的としてアパート経営をしているというケースは非常に多いでしょう。その延長上の流れでシェアハウスを企画する時は注意が必要です。

なぜなら敷地が広いからという理由で、従来のケースでは、闇雲に大規模な建物(賃貸マンションや世帯数の多いアパートなど)を建ててしまう場合が少なくないからです。

銀行や住宅メーカーのアドバイスを鵜呑みにすると、必然的に、規模が大きくて借金の額が大きいプロジェクトになってしまいます。まあ当然と言えば当然です。

しかしながら、大規模なアパートやマンションは、老朽化してくると買い手を見つけるのが難しいのです。一般的には、残存している法定耐用年数分の期間しか融資が受けられないからです。こうなると、もしも売却したくなった時には、適正な価格(少なくとも相続税評価額以上)で売れないことが多いのです。
ましてや老朽化している物件なのに旧法の借家権による契約だと、明け渡し交渉にもコストが掛かり、最悪の場合は二束三文でしか買い手がつかないのです。
せめて債務残高と譲渡税の総額以上の価格で売れないと、相続破産になってしてしまいますが、実際、そのような境遇に陥った地主層は多いのです。

さらに昨今は、従来型のワンパターンな間取りのアパート経営にも限界が来ています。
都心や人気の近郊都市でもない限り、辺鄙な郊外で昔ながらの「馬鹿の一つ覚え」のような間取りや居住空間を大量生産して供給しても、競争力があるはずも無く、経営が傾くのは時間の問題です。家賃が下がり続けているエリアは多いのです。

さて、土地保有者(いわゆる“地主”)が土地の有効活用をする目的の中でも、特に大きく占める目的は相続対策でしょうか。
しかし、相続対策と一口に言っても「納税や遺産分割のために換金性を重視すべき」というケースもあれば、「そもそも相続の前に介護費用が掛かり過ぎて資産を効率的に運用しなければ子が負担に堪えられない」というケースもあります。
昨今、後者のようなケースが非常に増えています(詳しくは拙著「やってはいけない相続税対策と遺産分割」を参照して下さい)。

要するに、一口に様々な相続対策がありますが、繰り返しますが、シェアハウスの最大の強みは“汎用性”です。

汎用性の本質とは「貸せる、売れる」という条件がバランス良く最適化されているということです。

敷地分割や設計の工夫次第では「相続税の節税効果を得ることと同時に、土地や建物の換金性も失わない」というメリットを同時に享受することが可能なのです。

銀行や住宅メーカーが薦める一般的なアパート経営(要するに、借金漬の賃貸住宅経営)は、確かに節税には有効なことが多いのです(なぜなら現実に損をしてしまうことこそが目的なのですから)。
一方で遺産分割や納税のための換金性を失うことが多いため、結局は良い結果が得られないケースが多いのです。
膨大な借金の返済に追われて、最終的には土地や建物を売却し、譲渡税を払ったら、なんと財産をすべて失ってしまったという悲惨な事例も少なくありません。

問題は、出口戦略の無い相続税対策では、失敗する確率が高いということなのです。不動産に汎用性が無いと、リスク管理が出来ないのです。

さて、ではシェアハウスによる土地活用とは、どんなものなのか?

一口で表現すると「失敗しても安全な出口がある」。それがシェアハウスによる賃貸経営です。

換金性を維持しつつ節税効果も得られる。かつ、祖父母や子の家族たちも自宅として使える住宅。そういうシェアハウスの汎用性は、どんな対策にも一定の効果をもたらす魔法の対策と言えるかもしれません。
つまり、一戸建住宅のようなデザインをしているのにアパートのように機能するのですから、当然と言えば当然です。
売却する場合は、アパートではなく、住宅として売却すれば、残存法定耐用年数の縛りが厳しくないので、次に買う人が融資を利用しやすいという大きなメリットがあるのです。

さらに、シェアハウスという土地活用法を相続税の節税という観点で考察すると、非常に有利な特性を持つということに気づきます。

仮に「子と親とがシェアハウスで同居して住んでいた場合(この段階では他人に賃貸に出しているのではない)、一定条件下において相続するケース」を考えてみます。

このケースでは、小規模宅地等の評価減を受けることが出来ます。つまり、一定の面積までの土地なら路線価を基準にした評価額の50%~80%が割り引かれます。

一方、相続時にシェアハウスとして賃貸に利用していたとしたら、それはそれなりに利用されている土地の路線価ベースで住宅地なら約20%前後の評価減が受けられますし、さらに建物の固定資産税評価額の30%が減額されます。

つまり、適正な規模を意識しつつ最有効なプランにより企画設計をしておけば、「高く売れる、高く貸せる、大きく節税できる」という最高の土地有効活用プロジェクトになる可能性を秘めているのです。

公開日:2016年6月29日

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